Beatrustの外国籍エンジニアリングマネージャーが語る:グローバルチームの可能性

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髙木早弥奈

グローバル採用コンサルタント

Beatrustは2020年に創業したスタートアップ企業です。デジタルの力を活用して、組織内の課題を解決することを目指し、人と人がより強くつながる環境作りのためのタレントコラボレーションツールをはじめ、企業の人的資本を最大限に活用するためのソリューションを提供しています。Beatrustは「誰もが最高の自分を実現できる世界を作る」というビジョンを掲げていますが、その実現のために、多様なバックグラウンドを持つ才能を世界中から集め、グローバルなチームによる魅力的なコラボレーションを生み出しています。

プロダクトチームは11名で構成され、日本人メンバーは2名、そのほかは全員が外国籍です。デザイナーチームにはアメリカやインドネシア、エンジニアチームには台湾、中国、カナダ、オーストラリアなどの出身者が所属し、各チームが多国籍なメンバーで構成されています。

今回インタビューに応じてくださったのは、ドイツ出身で現在Beatrustのエンジニアリングマネージャーを務めているAndreasさん。彼が率いるグローバルエンジニアチームの成長と挑戦についてお話を伺いました。

入社直後から感じるグローバルチームの魅力と刺激

グローバルなエンジニアチームがグローバルであることのメリットは大きく、「文化の違いをが毎日感じられ、異なるバックグラウンド文化をもつメンバーとの中での協力が本当に楽しくて、やりがいを感じられる」とAndreasさんはいいます。

Andreasさんが語る異文化交流の面白さを象徴する出来事として、彼自身の入社初日の印象的なエピソードを教えてくれました。初めてオフィスを訪れた日、ちょうどハロウィンパーティーが会社で開催されました。上司であるVPoEがトラのコスチュームを着てAndreasさんを出迎え「なんて素晴らしい会社なんだ」と感じたそうです。

しかし、その週明けの月曜日、同じオフィスに来た彼は驚いたといいます。金曜日にあんなに楽しんでいた人たちが、真剣に仕事に取り組んでいるのです。その姿を見て、「違う会社に来てしまったのでは?」と感じたそうです。日本人のギャップに驚きと面白さがあったと振り返ります。

Beatrustがグローバルなエンジニアチームの構築に取り組む理由

Beatrustは外国籍エンジニアを積極的に採用していますが、その理由は主に3つあるとAndreasさんはいいます。

グローバル志向の企業文化

まず一つ目の理由は、Beatrust全体がグローバルな視点を持っているという点です。これは、CEOがシリコンバレーで10年以上にわたり経験を積んでいたことも影響しているようです。ビジネスサイドのメンバーは全員日本人であるにもかかわらず、一般的な日本企業に比べて会社全体にはかなり国際的な文化が浸透しており、西洋的な働き方や考え方が自然に根付いてます。このため、エンジニアチームへの外国籍のメンバーの加入は自然に進んでいったそうです。

厳しい日本国内のエンジニア人材市場

二つ目の理由は、国内だけでエンジニアを採用することの難しさです。日本市場では多くの企業が優秀なエンジニアを求めている上、人材も限られているのが現状です。Beatrustの求めているエンジニアスキルを持っており、かつBeatrustのミッション・ビジョン・バリューに強く共感するメンバーを探すことは難しい状況でした。そんな中、外国籍のエンジニアの採用を進められたことは大きな助けとなったといいます。最初に採用したのはすでに日本に住んでいて、流暢に日本語を話す外国籍エンジニアだったそうです。そこから徐々に外国籍メンバーが増え、開発チームのコミュニケーションが英語にシフトしていきました。そして、現在ではTokyoDevをはじめ英語で求人を出すようになり、グローバルな採用活動を展開しています。

急成長のために必要な海外人材

最後に、Beatrustがエンジニアチームを急速に拡大する必要があったことが三つ目の理由です。2022年の中頃、シリーズAで大規模な資金調達を終えた直後、エンジニアチームをスピード感を持って拡大するという強いニーズが生まれたのではないかとAndreasさんはいいます。彼自身もちょうどその流れがあった2022年11月に入社した一人だそうです。

グローバルチームがもたらす視点とシナジー

グローバルなエンジニアチームは、Beatrust全体に好影響をもたらしているといいます。製品に対する多様な視点や異文化交流の楽しさをAndreasさんは例としてあげてくれました。

多様な視点で製品を強化

グローバルなエンジニアチームは、ユーザーの多様な考え方を理解する上で非常に役立っているといいます。Beatrustが提供するタレントコラボレーションツールは、異なる文化や言語を持つ従業員同士の協力を促進するものです。それは、まさに彼ら自身が働く環境と同じ。様々なバックグラウンドを持つチームの知見が活かされているのです。

たとえば、Beatrustの製品には「Beatrust Ask」という業務課題をスピーディに解決する社内専用のQ\&Aサイトや「Beatrust Share」という知識の共有とアーカイブに特化したシェアボードがあります。これらには自動翻訳機能があり、ユーザーの言語設定に基づいてすべてを自動的に英語または日本語に翻訳することができます。これにより、他の人のプロフィールや質問の内容などのすべてを自分が選択した言語で確認することが可能です。Beatrustでもビジネスチームによる多くの投稿が日本語なので、Andreasさん自身もこの自動翻訳を常にオンにして頻繁に利用しているそうです。重要な点は、どのように人々が協力し合っていて彼らが何を重要視しているのか、製品にどのような情報を載せたいのか、載せたくないのかを、開発チームのメンバーそれぞれが理解できることだといいます。そして各メンバーが自分の考えを述べあい、活発なディスカッションを経て製品の改善に反映されているのです。

この製品は日本国内の大企業向けに販売されています。外国籍エンジニアを抱える大企業も日本で増えてきている中、チーム内でのコミュニケーションをや協力を円滑にする製品強化の背景には、こうしたBeatrustメンバー自身による実体験があるのです。そういった大企業でもすでに外国籍のエンジニアがいる会社も増えてきています。

異文化交流で得られる新しい価値観

文化的な違いも、グローバルチームで働く大きな楽しみのひとつだとAndreasさんは語ります。毎日他国のメンバーとコミュニケーションを取りながら「あなたの国ではどうなの?」と話すことで、新しいことを学びつつ異なる視点から物事を理解できるのは刺激的だそうです。普段ニュースなどで世界の情報は得られますが、その国の人から直接話を聞くことができる機会は多くありません。こうした環境では、より深く異文化を知ることができるといいます。

さらに、Beatrustのエンジニアチームではオープンなコミュニケーションが根付いており、全員が率直に意見を述べることができるそうです。日本の文化では控えめに意見を伝えることが一般的ですが、Beatrustではその逆。問題があれば積極的に指摘し、解決策を見つける文化が形成されています。日本人のメンバーもこの文化を好み、はっきりと意見を述べることができているといいます。

生産性の向上

Andreasさんはドイツの労働文化を自分のチームに取り入れ、生産性を高める試みをしています。ドイツでは休暇をしっかり取る文化が根付いており、過剰な残業を避けることが一般的です。そこで、Andreasさんがチームメンバーに「今日は休みを取ってください」と伝えると「分かりました、でも朝と夜に少しだけ仕事します」といわれたことがあるといいます。それでも「ちゃんと休んで!」と説得するようにしました。最初はメンバーも混乱していたそうですが、今では少しずつ適応してきているといいます。といっても、彼はそのドイツ的なスタイルを強制するつもりはなく、チームに選択肢を提供することを心掛けているといいます。「これが私の文化的背景だから、あなたもそうしたいなら遠慮なくそうしていください」と伝えているそうです。

コミュニケーションとチームワーク強化に有効な取り組み

Beatrustでは、エンジニアチームとビジネスチームが異なる言語を使用しているため、コミュニケーションの工夫が欠かせません。チーム全体がスムーズに連携するためには、言語の壁を超えるさまざまな取り組みが行われているそうです。

英語と日本語のバイリンガル体制

エンジニアチームは基本的に100%英語でコミュニケーションを取っていますが、ビジネスチームはほぼ日本語です。両チームが週次ミーティングなどで一緒に集まる際は、重要なポイントが英語と日本語両方で伝えられるように工夫されています。Beatrustのコアバリューの一つである「Be Greatful」という助け合いの文化があり、メンバー一人一人がコミュニケーションを大切にしています。これにより、どちらのチームも大事な情報を見逃すことなく共有できているそうです。これはビジネスチームとエンジニアチームの橋渡し役として、Andreasさんをはじめとするバイリンガルなリーダーがミーティングに参加し、それぞれのチームに情報を伝える役割を果たしています。

Andreasさんが入社した当初、全員が英語と日本語をある程度話すことができましたが、新しい採用や他のメンバーの退職により、状況が少し変わってきたそうです。現在ではエンジニアチームには日本語を流暢に話せないメンバー、ビジネスチームには英語を流暢に話せないメンバーがそれぞれ数名います。そのため、コミュニケーションの方法や役割も徐々に変化していったそうです。

リモートワークと出社の適切なバランス

Beatrustでの働き方は月曜日から木曜日はリモートワーク、金曜日は全員がオフィスに集まるハイブリッドスタイルです。この柔軟な働き方はエンジニアたちにとって非常に有益で、特にリモートワークで作業に集中する環境が整っていることで、生産性が高まっているとAndreasさんはいいます。

全員が出社する金曜日には、エンジニアチームもビジネスチームも自由に話し合える「No meeting hour」という時間も設けられており、これがチームの結束を強める重要な役割を果たしています。ここでは仕事の話だけではなくプライベートの話もされているそうです。リモートワークの時間のほうが長いですが、顔を合わせて話すことでチームワークがよりよく機能し、他のメンバーに助けを求めやすくなるというメリットを感じているといいます。

チームビルディングを強化するイベント

Beatrustでは、定期的にチームビルディングを目的としたイベントが開催されています。毎月行われる「Come Together」というイベントでは、Beatrustに興味を持っている人や潜在的な候補者、さらには社員の友人が集まり、楽しく交流する場が提供されています。

半年ごとに会社全体のオフサイトイベントがあり、直近のイベントでは高尾山に行き、2日間のワークショップに加え、うどん作りなどの といったアクティビティを楽しんだそうです。アクティビティの後は、チームや会社の文化、今後の目標などについてのワークショップも半日かけて行われました。長い議論をする機会があることもオフサイトイベントの利点で、メンバーと朝の3時頃まで話していたこともあるとAndreasさんはいいます。

さらにエンジニアチームでは、6ヶ月ごとに「Dev Offsite」というイベントも開催されるそうです。

ミスマッチを防ぐ効果的な選考プロセス

Beatrustではシニアエンジニアを中心に採用していますが、候補者との初めての接点であるカジュアル面談でのコミュニケーションが重要視されています。この段階で、会社と候補者の間でマッチングの確認を行い、多くの場合、お互いにマッチするかどうかがある程度わかるといいます。

カジュアル面談後には1時間の技術面接があります。その次に「ワークサンプルテスト」を行います。これは実際の業務に近い形で課題を解決するプロセスを見るための試験です。最初の30分で課題の説明を行い、その後候補者は3時間にわたって取り組み、何か質問があればエンジニアやデザイナーとSlackでやり取りもできます。そして、3時間後に30分間のプレゼンテーションを行い、エンジニアたちが質問をします。このテストで、候補者が実際にどのように仕事を進めるかを確認することができるそうです。

多くの企業、特に小規模の会社ではGoogle社などのコーディングテストを参考にして、特定のアルゴリズムに関する質問が多いことにAndreasさんは疑問を持たれていたといいます。こうした質問は調べれば答えが分かるもので、日常の業務で頻繁に使われるわけでもありません。面接のためだけに準備して答えることが多く、その後、実務ではほとんど使わないことが大半です。Beatrustの方法であれば、候補者がどのように実際に仕事を進めるのか、コードの構造、問題解決の方法、そしてコミュニケーションの取り方までも確認できるため、非常に理にかなっていると感じられています。

外国籍エンジニアへの手厚いサポート

Beatrustに採用されたAndreasさんは、来日から実際の仕事に着手するまで、スムーズで充実したサポートを受けたといいます。彼が実際に体験したBeatrustのサポート体制や福利厚生について伺いました。

来日時のスムーズな対応

Andreasさんの入社に際して契約やビザ取得のプロセスは非常にスムーズだったそうです。労働関連や税務関連、ビザ手続きについて詳しいスタッフがサポートしてくれたことがありがたかったとAndreasさんはいいます。外国人にとって、日本の労働法や税制は複雑で分かりにくいことも多いですが、Beatrustにはそれらに精通した日本人スタッフが英語でサポートする体制が整っています。このサポートのおかげで、外国籍の社員も安心して働き始めることができているそうです。

思っていたより英語が話せた

ドイツにいた頃、日本の労働文化について「日本ではすべてが大変で、誰も英語を話さない」と聞いていたというAndreasさん。日本での仕事や生活に不安を感じていたそうですが、Beatrustに来てみるとその心配はすぐに解消されました。予想以上に多くの社員が英語を話せたからです。もちろん、ヨーロッパの人たちのように流暢ではないものの、十分にコミュニケーションが取れるレベルの英語を話せる人が多く、良い意味でとても驚いたとAndreasさんはいいます。当初、書面でのやり取りは日本語が中心でしたが、それも簡単に翻訳でき、特に問題はありませんでした。Andreasさんにとって、コミュニケーション面でも非常に良いスタートを切ることができたそうです。

柔軟な休暇制度と働き方

外国籍社員、特にヨーロッパの出身者が多い企業では、長期休暇が取得しやすいかという点も重要です。Beatrustでは、Andreasさんがドイツに4週間帰国した際、2週間は休暇を取得し、残りの2週間はリモートで働くことができました。こうした柔軟な働き方ができる体制を整え、外国籍社員が母国からでも仕事を続けられる前向きな支援をしているそうです。

グローバルチームの良さと次なる課題

グローバルなチームでお互いに刺激を受けながら、楽しく働くBeatrustのメンバー。とはいえ、今後解決したい課題もあるとAndreasさんはいいます。それは「どうすればもっと日本人のエンジニアを惹きつけられるか」ということです。現状Beatrustに応募してくるエンジニアはほとんどが外国籍であり、その大きな理由は英語が必要なためです。しかし、日本国内で英語を話せるバイリンガルのエンジニアを見つけることは非常に難しいことから、どのように解決していくべきか頭を悩ませているといいます。これはBeatrustに限らず、多くの企業が直面している課題です。今後、彼らがどのようにこの課題に取り組んでいくのかに注目しながら、TokyoDevとしてサポートできることも模索していきたいと思いました。

今回は外国籍エンジニアリングマネージャーから貴重な生の声を聞くことができました。Andreasさんのようなリーダーの存在が、グローバルチーム構築を成功に導く近道になるのかもしれません。

著者について

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髙木早弥奈

グローバル採用コンサルタント

2019年から人材業界に携わっています。様々な国籍のソフトウェアエンジニアの日本での就職サポートを強みにしています。

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