Linkedinを使ったエンジニア採用の裏技

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髙木早弥奈

グローバル採用コンサルタント
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木本恵子

寄稿者

人材紹介会社の間でよく使われていたLinkedInですが、最近では企業採用担当者にも広く使われるようになってきました。それでもまだレッドオーシャンとは呼べないほど、LinkedInはエンジニア採用において優れた媒体だと考えています。

この記事ではエンジニア採用の9割をLinkedInで実現した経験に基づき、LinkedInの効果的な使い方とノウハウを詳しく解説します。採用の成功率やアプローチへの反応率を向上させるヒントが隠れているかもしれませんので、エンジニア採用に携わる方はぜひお読みください。

コスパ最強のLinkedIn採用

一定のスキルを持ったエンジニア採用を人材紹介会社などに依頼すると、一般的には一人の採用につき年収の35%程度、すなわち200~400万円の成功報酬がかかるのが相場です。また、依頼してから採用決定までに3ヶ月以上かかることが多いでしょう。

一方、かつて私が依頼を受けた大手メーカー企業は、たった57.5万円の費用で博士号を持つエンジニアを3名採用することができました。しかも、1人目の採用決定までにかかった時間は約1ヶ月。この実績は、LinkedInがコスパもタイパも最強のダイレクトリクルーティングプラットフォームになる可能性を示しています。

なお、この57.5万円の内訳はLinkedInの有料プラン3ヶ月分(7.5万円)と私自身に支払われたアプローチ代行委託料(50万円)です。

LinkedInには他のSNSと大きく異なる点があります。それは、ビジネスで活用するためにアカウントを育てる必要がないということ。投稿数やフォロワー数に関わらず、人材採用で成果を出すことが可能だということです。効果的に使うためには有料プランの利用は必須ですが、価格の高いプランを利用しなくても、本記事で紹介している裏技にすぐに取り組むことができます。人材紹介会社に依頼する予算がないスタートアップ企業などでは、試してみて損はないと思います。

まるで宝探し!LinkedInで理想のエンジニアを見つける

LinkedInで理想のエンジニアにたどり着くために必要なのは下記の5ステップです。

  1. 希望する人材がヒットする検索条件を考える
  2. ヒットした人のプロフィールを確認
  3. アプローチ前に自身のプロフィールを整える
  4. 希望の人にアプローチ
  5. 返事が来たらカジュアル面談を実施

最初のステップである検索条件と検索の仕方がとても重要ですので、さっそく実践的な手法とコツをご紹介しましょう。

他の人がアプローチできていない人を見つける!秘訣はブーリアン検索

LinkedInを使って成功する最大のポイントは、他の企業がアプローチできていない優秀な人材をいかに探すことができるかに尽きます。「他の企業がアプローチできていない人」は、LinkedInにおいては「検索にヒットしにくい人」を意味します。つまり、検索条件や検索キーワードを工夫して検索されにくい人材をどれだけ見つけられるかが、成功を大きく左右するというわけです。

やみくもな方法では見つけられない宝物のような人材を効率よく見つけるには、検索範囲のバランスが重要です。というのも、範囲を広げすぎると要件に合わない人たちのプロフィールがたくさん出てきてしまいますし、逆に狭めすぎるとヒットする人数が少なくなります。そこで必ず活用したいのがブーリアン検索です。

ブーリアン検索とは「AND」 「OR」 「NOT」で検索ワードをつなぐことで、検索対象を広げたり狭めたりする検索方法です。

AND ANDでつないだすべての条件を満たす必要があります。検索範囲を絞り込む際に使用します。
OR ORでつないだ条件のうち、少なくとも一つを満たす必要があります。検索範囲を拡大する際に使用します。
NOT NOTに続く特定の条件を除外します。検索範囲を制限する際に使用します。

ブーリアン検索を使いこなすことで候補者を見つけられる確率が格段に高くなります。以下に具体例をあげて解説してみます。

例えば、Rubyの経験を持つバックエンドエンジニアを探している場合、ブーリアン検索を活用してこのように検索をします。

(“engineer” OR “developer” OR “programmer” OR “エンジニア” OR “開発” OR “プログラマー”) AND (“Ruby” OR “Rails” OR “RoR”)

「engineer」や「エンジニア」など、エンジニアを表す複数のキーワードを「OR」でつなぐことで、いずれかの単語が入っているプロフィールが検索で引っかかるようになります。プロフィールは日本語で書かれていることもあれば英語で書かれていることもありますので、日本語と英語の両方のキーワードを漏れなく入れるのがポイントです。

ここにAWSの経験が必須の場合は、下記のように条件を加えます。

(“engineer” OR “developer” OR “programmer” OR “エンジニア” OR “開発” OR “プログラマー”) AND (“Ruby” OR “Rails” OR “RoR”) AND (“AWS” OR “Amazon Web Services”)

さらにフィンテックの経験があると望ましい場合には、「AND」を加えて下記のように絞り込みます。

(“engineer” OR “developer” OR “programmer” OR “エンジニア” OR “開発” OR “プログラマー”) AND (“Ruby” OR “Rails” OR “RoR”) AND (“AWS” OR “Amazon Web Services”) AND (“fintech” OR “finance” OR “金融”)

また、外国籍エンジニアを採用している企業でも一定の日本語レベルが必須の場合には、

AND (“N1” OR “N2” OR “N3”) AND (“Japanese” OR “Business Japanese” OR ”Business Level”)

などという言語能力に関わる条件を加えて検索することで、日本語を話せるエンジニアを探すこともできます。また、例えばフリーランスのエンジニアなど対象外にしたい人がいる場合は「NOT」を活用して

NOT (“freelance” OR “フリーランス” OR “フリーランサー” OR “個人事業主” OR “self-employed” )

と加えて検索をすることもできます。

ブーリアン検索で効率よく理想の候補者を探すために、まずは条件の優先順位を決めることの重要性をおわかりいただけたでしょうか?優先順位を決めた上で、プロフィールに書かれている可能性があるキーワードを網羅的につないでいくことで、他の企業がアプローチできていない候補者に出会える可能性を高めることができます。

ブーリアン検索で絞り込めない時は職種検索で狙い撃ち

効果的に希望する候補者を探すためにはブーリアン検索が欠かせないものの、それだけではうまく絞り込めないことがあります。特に、特定の職種で人材を採用したい場合はそうしたケースがよくあります。

例えばフロントエンドエンジニアを探している場合、「フロントエンド」というキーワードではフルスタックエンジニアも検索にヒットしてしまう可能性があります。フルスタックエンジニアのプロフィールには多くの場合「フロントエンド」と書いてあるからです。

そんな時には「役職」の項目で絞り込むのが効果的です。具体的にどのような手順で絞り込むかを以下に解説します。

仮に貴社では今、Reactの経験を持つフロントエンジニアを探しているとします。そこで、ブーリアン検索を使って下記のキーワードで検索をしたところ、

(“engineer” OR “developer” OR “programmer” OR “エンジニア” OR “開発” OR “プログラマー”) AND (“React”)

かなりの人数がヒットしてしまう上、AND (“フロントエンド” OR “frontend”)と条件を加えてもフロントエンドエンジニアだけを絞り込めそうにありません。そんな場合には検索フィルター内にある「役職」の項目に「フロントエンド」と入力することで、現在フロントエンドのポジションにいるエンジニアだけに絞り込むことができます。

LinkedInでは特定のキーワードを含む役職を入力すると、関連する候補者を自動で表示するアルゴリズムが機能しています。そのため、「フロントエンド」と入力すれば、それに関連する役職に就ている候補者を集めて表示してくれるのです。

このアルゴリズムを利用する他にも「frontend」 「front-end」 「front end」など任意の役職キーワードを入力することも可能です。どちらも試しながら、検索にヒットする数を見て調整するのがおすすめです。

このようにブーリアン検索と役職での絞り込みを掛け合わせることで、希望の条件を満たす候補者だけを狙い撃ちすることができます。そうして検索条件に合致したプロフィールを一件ずつ確認し、希望に合う人をスカウトしていくことになるのですが、その前にやるべきことがもう一つ。自分のプロフィールを整えることです。

候補者は見ている!リクルーターのプロフィール

候補者にアプローチする前には、自分のLinkedInのプロフィールが相手の目にどう映るかを必ず確認しましょう。たかがプロフィールとあなどってはいけません。自分よがりのプロフィールではエンジニアの興味を引けず「まったく返信が来ない」ということにもなりかねないからです。

まず、一番重要なのはヘッダーの部分。名前の下に表示される肩書などです。候補者に送るメッセージには送信者の名前とともにヘッダーが表示され、その内容で信頼できる相手であるかを判断されます。メッセージの開封率や反応率も変わると言われるほど、実は重要な項目なのです。

ヘッダーには社名と自分の担当やポジションに加え、採用に関わるフレーズを1〜3つ付け足すのがおすすめです。例えば、「株式会社〇〇 / エンジニア採用担当 / フレーズ1 / フレーズ2」という構成で、自社の求人の魅力を下記のようなシンプルでわかりやすいフレーズにして記載します。

  • どんなエンジニアを求めているか
    • 「バックエンドエンジニア募集中|Go, AWS, マイクロサービス」
    • 「Webエンジニア採用中!React / TypeScript好きな方歓迎」
    • 「機械学習エンジニア募集|Python / データ分析に強い方」
  • どんな働き方ができるか
    • 「フルリモートOK!Webエンジニア募集中|React 」
    • 「裁量労働制|柔軟な働き方ができる開発チームでエンジニア募集」
    • 「週3リモート可|安定した環境で成長できるエンジニア職」
  • 会社の魅力
    • 「エンジニアの働きやすさを追求する会社で、一緒に開発しませんか?」
    • 「技術力を活かして、社会を変えるサービスを作りませんか?」
    • 「成長中のスタートアップで、新しい技術に挑戦するエンジニア募集」

ヘッダーを整えたら、次は自己紹介の内容です。ここはエンジニア目線で魅力を感じられる内容が理想的です。自己紹介とありますが、実は自己紹介を書かないのがポイント。エンジニアの興味を惹きつけるLPのような役割だと考え、自社や採用ポジションの魅力を訴求します。
さらに気になった人には職歴を見られることもありますが、LinkedInのプロフィールは自己紹介までが重要です。候補者にアプローチする前にしっかり整えるように心がけましょう。

つながり申請でコストを抑えてアプローチ

さて次は、いよいよLinkedInで見つけた候補者にアプローチするという段階まできました。アプローチ方法としてまず思いつくのが有料機能のInMailですが、実はInMailと同じくらい「つながり申請によるアプローチ」も有効なことをご存じでしょうか?つながり申請は無料の機能ですが、私の実績では面談に進められる確率はInMailと同じぐらいでしたので、活用しない手はありません。つながり申請を効率化して最大限に使うには、自動化ツールの導入が有効です。

エージェントに勤務していた頃、コストを抑えたアプローチ方法を試行錯誤した結果たどり着いたのが「Octopus CRM」というサードパーティの自動化ツールです。

Googleの拡張機能ツールで、検索で表示された人たちに対して自動でアプローチしてくれます。例えば、事前に設定したメッセージでつながり申請を送ったり、つながり申請を承認してくれた人にだけフォローアップのメッセージを送るなどです。

自動化ツールを利用することでアプローチ数を担保することができるため、InMailによるアプローチ数が少なくても期待する面談の件数を達成できる可能性が高くなります。つまりLinkedInの有料プランにかけるコスト、ひいては採用コストを抑えることができるのです。

つながり申請の一般的な承諾率は30%と言われています。少なくとも20%の承諾率を目安にしながら自動化ツールで効率化を図り、同時に次で紹介する反応率を上げる工夫も取り入れることでエンジニア採用の成功率を高めましょう。

相手に合わせた短いメッセージで反応率アップ

アプローチした候補者からの反応率を上げるコツはメッセージの内容にあります。まず注意すべきなのは長文を避けること。コピペした長い文章をテンプレのまま送られて喜ぶ人はいません。テンプレを用意していたとしても冒頭の一部は候補者に合わせてカスタマイズし、できるだけコンパクトな文章を送ることが大切です。どうしても長文になってしまう場合には「あなたのこういう会社でのご経験が〜」や「〜の技術をお持ちだと思ってご連絡しました」など、相手に合わせてカスタマイズしてから送るようにしましょう。

とはいっても、送信する件数が多くて1件ずつカスタマイズするのが大変なこともあります。そんな場合には、まずは返信をもらうことを目標に設定し、あえて非常に短いテンプレをカスタマイズせずに送信するのも有効です。

LinkedInでの返信率は一般的に18〜25%と言われています。私が実際に外国籍エンジニアに対してコピペの文章を送った場合の返信率は10%でした。これらの数字から想像すると、アプローチする人に合わせて文章をカスタマイズすれば、さらに高い返信率を目指すことも不可能ではなさそうです。とはいえ、経験のあるエンジニアを採用したいと考えている企業は多く、競争が激しいのは事実。工夫をこらして高い返信率を目指しましょう。

面談はカジュアルに

試行錯誤したメッセージに返事が来ても、すぐに選考に進めたい!と焦ったり意気込みすぎるのは危険です。というのも、LinkedInはあくまでSNSであり、転職したい人だけが利用しているわけではないからです。むしろ、ほとんどの人が今すぐに転職したいわけではないということを念頭に置いておく必要があります。

そのため、メッセージに返事が来てもすぐに「応募してください」といったコミュニケーションではなく、まずはカジュアルな面談を設けるのがベストです。その際、候補者が経験豊富なシニアエンジニアなどであれば、それにふさわしい担当者をしっかり考え、相手に満足の高い面談の機会を提供することが重要です。

また、昨今は副業の提案に対しては非常に反応がいいため、「今の仕事を続けながらXX%ぐらいの時間を当社で働いてもらえませんか?」といった提案をするのもおすすめです。そうしたコミュニケーションを重ねながら、まず接点を作ることで将来の採用へとつなげていくことができます。

先述したInMailとつながり申請の反応率から計算すると、例えば月に4件のカジュアル面談を実施したい場合であれば、InMailなら月50通、つながり申請は月200通のメッセージ送信がKPIの目安となりそうです。

  • Inmail返信率:18~25%

→ Inmail:50通/月×25%(返信率)×30%(面談率)=4面談/月

  • つながり申請承諾率:30%

→つながり:200通/月×30%(承諾率)×20%(メッセージ返信率)×30%(面談率)=4面談/月

最後に

LinkedInはSNSというよりもダイレクトリクルーティングプラットフォームに近いと考えています。エンジニア向けのスカウト媒体は増えましたが、LinkedInは日本ではまだ本格的に利用している企業は少なく、ポテンシャルのある媒体だと感じています。
しかし、LinkedInの活用方法に関する情報は決して多くありません。私がこれまで実践で培った知見をまとめたこの記事が、少しでも皆さんのお役に立てば嬉しく思います。

著者についてs

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髙木早弥奈

グローバル採用コンサルタント

2019年から人材業界に携わっています。様々な国籍のソフトウェアエンジニアの日本での就職サポートを強みにしています。

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木本恵子

寄稿者

‌TokyoDevでは総務などをサポート。食品やライフスタイル業界での経験を活かした企画やコンサルティングを提供する株式会社MALOUの代表も務めています。

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