日本で働く外国籍エンジニアの現状

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髙木早弥奈

グローバル採用コンサルタント

はじめに

近年、日本でエンジニアを採用することが難しくなってきています。それに加えて、グローバル市場への展開を見据えたプロダクトを開発する企業が増えていることから、外国籍エンジニアの日本での活躍が注目されています。

しかしながら、外国籍エンジニアの現状については広く十分に理解されていないように思います。

この記事では、TokyoDevが実施した外国籍エンジニアに関する最新の調査結果を紹介します。

外国籍エンジニアの採用を検討している企業の人事担当者や経営者には参考になることも多いはずです。ぜひ目を通してみてください。

TokyoDevのDeveloper Surveyとは?

TokyoDevでは2019年から毎年、日本で働く外国籍エンジニアに対してアンケート調査を実施しています。もともとは給与面など日本の労働環境に関する情報を日本で働きたいと考えている海外在住のエンジニアにシェアする目的でスタートしました。

その後、給与面だけではなく普段働いている環境や仕事の内容、生活全般の満足度に関する調査などの項目を追加してきました。

年を追うごとに調査に協力してくれる外国籍エンジニアの数も増え、2023年の調査では713名のエンジニアから回答を得ました。

この記事では2023年の調査結果から以下の項目を抜粋して紹介します。

  • 年齢
  • 性別
  • 国籍
  • 日本に来たきっかけ
  • 居住地
  • 経験年数
  • 語学力

年齢

日本で働く外国籍エンジニアの平均年齢や主な年齢層を把握することは、採用戦略を立てる上で参考になります。

30代が最も多く、全体の半数以上を占めています。また81.9%が40代以下と大多数です。

これらの結果から、新卒や第二新卒レベルではなく、一定の職歴を持つ層が多いことが伺えます。これは、ジュニア層では日本企業への転職が簡単ではないことも理由として挙げられるでしょう。

一方で、日本に来るエンジニアの中には家族で来日したいと考えるケースもあります。そのような場合には、彼らが日本で安心して生活し働けるようなサポート、具体的には家族ビザの取得支援や住宅支援などの生活面でのサポートも提供するのがいいでしょう。

また、キャリアの中盤に差し掛かるエンジニアたちは、安定した職場を求める傾向があります。日本の企業が魅力的な選択肢となるためには、長期的なキャリアパスの提供、継続的なスキルアップの機会、そしてプロジェクトマネジメントやチームリーダーとしての役割を任せることも一つの方法です。

性別

次に性別を見てみましょう。日本におけるエンジニアの男女比は4:1と言われていますが、TokyoDevの調査では回答者の88.4%が男性という結果でした。

外国籍の女性のエンジニアを積極的に採用することで技術チームの多様性は高まります。現時点では日本で働く外国籍女性エンジニアの数は少ないものの、海外では多くの優秀な女性エンジニアが活躍しています。採用戦略を立てる際には、多様性を意識するのもいいでしょう。

また、外国籍に限らず、女性のエンジニアで特に家庭を持つ人に対してはフレキシブルな勤務時間やリモートワークの制度、保育支援などの施策が有効です。女性にとって働きやすい会社は男性にとっても働きやすい会社といえます。自社の支援や制度がチームの多様性を高めるには十分かを改めて見直すことも重要です。

国籍

TokyoDevを活用している企業では、多国籍なメンバーで開発チームが構成されているケースがほとんどです。実際にはどんな国籍のメンバーがいるのでしょうか?

「その他の国」を除いてアメリカが20%で最も高い結果となりました。次に欧州、オーストラリアなどの英語圏が比較的多くなっています。

これは日本全体の傾向を表しているわけではなく、TokyoDevの特徴が表れています。TokyoDevのサイトは基本的にすべて英語で英語話者がメインのターゲットです。そのため、必然的に英語を話すユーザーの多さが表れる結果が出たと推測できます。

日本に来たきっかけ

回答者の約半数を占める44.8%の外国籍エンジニアが、日本企業に採用されたことをきっかけに来日していることがわかります。

これは日本企業が提供する技術的なチャレンジ、キャリア成長の機会、安定した雇用環境などが彼らにとって十分魅力的であること示しています。

また23.8%の外国籍エンジニアが学生として来日しています。日本の教育機関を卒業後、そのまま日本で就職した可能性が高いと考えられます。日本の大学に留学することもあれば、日本語学校で勉強をしてから就職するケースも見られます。

また7.1%の外国籍エンジニアがワーキングホリデーで来日していることも注目すべきポイントです。日本は多くの国(欧米諸国や韓国、台湾、香港など)とワーキングホリデー協定を結んでいます。ほとんどの国で18歳~30歳までの若者がこのビザの対象ですが、国によっては35歳まで対象としているケースもあります。通常ワーキングホリデービザの有効期限は1年間です。この間に仕事を見つけ、技術・人文・国際業務のビザに切り替える人もいます。この場合、日本企業側にとってもメリットがあります。例えば、ワーキングホリデービザの有効期限内に一度働いてもらい、相性がよければ正社員として登用できるためミスマッチが減るほか、ビザは新規ではなく切替申請でいいため手間や負担が少なくて済むこともあるからです。

居住地

日本に住んでいるエンジニアの居住地は以下の通りです。

東京が60%と最も多く、関東圏に住んでいる割合は78%と大部分を占めることがわかりました。

リモートワークが普及している会社もあるとはいえ、関東圏への居住が必要である場合が多いとも読み取れるのではないでしょうか。

経験年数

チームに必要なスキルや知識を持っているエンジニアを採用するためには、経験年数を知ること重要です。TokyoDevの調査では、外国籍エンジニアの経験年数中央値は5年でした。

つまり、基本的な技術スキルやプロジェクト経験を持つミドルクラスのエンジニアの層が多いと言えるでしょう。また10年以上の経験を持つエンジニアが35.1%を占めていることから、高度な専門知識と深い業界経験を持った即戦力になるエンジニアが一定数いることを示しています。こういったエンジニアには、難易度の高い技術課題の解決や技術的な意思決定、マネジメントといった役割を担える能力もある可能性があります。

語学力

外国籍エンジニアの語学力も興味深い調査結果が出ています。

約9割の外国籍エンジニアが流暢もしくはネイティブレベルで英語を話すことができ、英語でのコミュニケーションに問題がないと言えます。

またTokyoDevの調査は、すでに日本で働いているエンジニアを対象にしていますが、回答者の約7割に日常会話以上の日本語能力があることもわかりました。日本に来た当初は日本語が話せないエンジニアでも、日本で生活する中で徐々に日本語を身につける人が多いと推測されます。

ただ実際は、より高いパフォーマンスを発揮でき、快適に働けることから、英語で仕事できる環境のほうが望ましいと考える外国籍エンジニアが多いと感じます。これは十分な日本語能力がある人にも当てはまります。

とはいえ、日本で生活するには一定の日本語力は必須ですし、エンジニアの日本語能力が高いほうが企業にとってもプラスに働くことが多いでしょう。そのため、外国籍エンジニアを雇用している企業の中には、福利厚生として日本語の学習支援を用意している企業もあります。

おわりに

海外には英語力が高く実務経験も豊富なエンジニアがたくさんいます。その中には日本で働きたいと考えるエンジニアもいて、実際に多くの日本企業が外国籍エンジニアの採用に成功しています。

ご紹介したデータによって、外国籍エンジニアへの理解を深めて頂けたら幸いです。

著者について

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髙木早弥奈

グローバル採用コンサルタント

2019年から人材業界に携わっています。様々な国籍のソフトウェアエンジニアの日本での就職サポートを強みにしています。

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