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2010年にローンチし、2013年に法人化、2016年に黒字化したDoorkeeperを売却しよう、と決意したタイミングを、僕ははっきりと覚えています。それは、ある金曜日の朝、40℃の熱で保育園から帰宅した2歳の息子の面倒を見ていた時でした。

子供の熱や病気はよくあることですが、その朝のPagerDutyのアラートもまさに同様で、DoorkeeperのKubernetesマスターの一つが正常に動作しておらず、注意を払う必要がありました。種類が異なる二人の「わが子」が、同時に僕の関心を必要としていて、今思えば笑える話ですが、その時はいっぱいいっぱいに感じました。

なんとかその日を乗り切り、Doorkeeperの顧客への影響が出る前に問題を解決し、息子は翌週には保育園に行けるようになりました。でも、この件以来、二人目の(人間の)子供が生まれたら、もっと頻繁にこんなことが起こるんだ、と考えるようになりました。

自分で事業をすることで、僕はものすごい自由を手に入れました。他人の許可を得る必要もなく、熱を出した子供の面倒をみるために仕事を休むことができるという恩恵を大いに受けることができ、それを実現させてくれたすべてのDoorkeeperユーザーには心から感謝しています。

僕が手掛ける事業がDoorkeeperだけだったら、困難な時であろうときっと続けていて、収益を上げているビジネスから受けられる恩恵を手放すことはなかったと思います。が、僕にはtokyodevというもう一つの事業がありました。Doorkeeperと同じように、サイドプロジェクトとして、日本での生活に関する個人ブログとして、tokyodevはスタートしました。ところが、数年後には外国人開発者の日本企業就職を支援する求人サイトへと成長し、とてもうまくいっていました。tokyodevだけで経済的にやっていくに十分なほどに成長したことだけでなく、tokyodevのおかげで日本で初めて仕事を得た多くの開発者の人生に、リアルに影響を与えていることを目のあたりにできるという大きなやりがいも感じていました。

今の自分の人生のステージにおいて、Doorkeeperよりもtokyodevに注力するほうが理にかなっているように思いました。技術的にはできるだけシンプルに作っているので、サーバもなく、あるのはスタティック型のウェブサイトだけです。AWSのS3やCloudFrontがダウンしない限り故障するものもありません。顧客リストは比較的少なく、でも高い価値のある顧客が並んでいます。ブートストラップビジネスの理想そのものだ、と考えました。

Doorkeeperから退くことは、自分の人生をシンプルにする方法として魅力的に思えました。ただ、一体誰が買収を望み投資してくれて、運用するための技術的なノウハウを持っているだろうか?と考えた時、脳裏に浮かんだ人がいました。Jonathan Siegelです。

Jonathanに初めて会った時、あまり話すチャンスはなかったものの、とても思い出に残る出会いでした。それは、2013年に僕が運営を手伝った東京Ruby会議10で、Doorkeeperで開催されました。僕の記憶が正しければ、Jonathanは休暇で日本に来ていて、日本のRubyコミュニティの様子を見に来ていました。彼はRubyが好きで、彼自身の事業や、のちに買収する他のRubyistたちの事業でも、いつもRubyを使っていました。

Jonathanは東京に移住してからも、日本市場に特化した電子契約サービスを共同創立するなど、起業家としての活動を続けていて、僕が主催していたTokyo Rubyist Meetupのイベントのスポンサーシップに関連してなど、何度か彼と会って話をする機会がありました。ある時、一緒に昼食をとっていたら、とても気楽な感じでDoorkeeperの買収を彼から申し入れられました。あまりに気楽な感じだったので、僕は冗談かなと思い、また、いずれにしても当時はDoorkeeperの売却を考えていなかったので、詳しい話には至りませんでした。

そのような経緯があったので、いざ売却を決心した時、Jonathanに最初に話をしようと思ったのはごく自然なことでした。彼にメールを送った2日後に、Zoomで話をし、正式なオファーをもらいました。その数日後には、お互いの意思を書面で交わし、1ヶ月後には売却が決定しました。

すべてがこの上なくスムーズに進みました。うまく物事が進まない自体や、お互いの意見の食い違いなどが起こる可能性も想定していましたが、そのようなことは一度も起こらず、最初から最後までJonathanのチームは合理的でした。

今回、JonathanがDoorkeeperの買収に投資した大きな理由は、日本の起業活動やテックシーンにもっと関わりを持ち、日本のコミュニティにもっと入り込みたいからだと言っていました。今回の彼と彼のチームとのやり取りから、それは心からの正直な気持ちだと僕は感じており、Doorkeeperは正しい人の手に渡ったと信じています。

今後は、John CrossがDoorkeeperの新しい代表になります。今回の売却における僕のコンタクトパーソンでしたが、彼もまた申し分のない人です。福岡在住の彼は、Doorkeeperの今後についてDoorkeeperユーザーと話をしたいと言っていました。何かあれば、john@doorkeeper.jpに連絡してください。

とても長い間、Doorkeeperは社会人としての私のアイデンティティの大部分となっていたので、寂しい気持ちになっているのでは?と思われるかもしれません。でも、実際はそんなことはなく、僕個人のために、そしてDoorkeeperの将来のためにも、間違いなく正しい判断をしたと感じています。Johnや彼のチームがDoorkeeperをどうしていくのかを見るのがとても楽しみですし、僕の元を旅立っていった「わが子」を遠くから見守っていきたいと思っています。

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