多様性のあるエンジニアチームを作る5つのメリット

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髙木早弥奈

グローバル採用コンサルタント

はじめに

近年、多くの企業が日本だけではなくグローバルなマーケットに目を向けています。また、優秀な人材を確保するために外国籍エンジニアの採用に踏み切る会社が増えています。実際にTokyoDevで求人を掲載しているほとんどの企業が、開発チームの全体もしくは一部において英語で仕事ができる環境を整えています。その結果、優秀で即戦力となる外国籍エンジニアの採用に成功しています。

今後もエンジニアの人材不足は間違いなく起こるでしょう。そのため、外国籍エンジニアの採用は企業にとって価値のある選択肢となる可能性があります。

とはいえ、実際に採用プロセスを進めたり受け入れを検討するにあたり、不安や疑問を抱える企業も多いのではないでしょうか。

この記事では、外国籍エンジニアを採用するメリットと雇用するときの注意点についてお伝えしたいと思います。

外国籍エンジニアの採用を検討されている方々にとって、多様性あふれるエンジニアチーム構築にチャレンジするきっかけになれば嬉しいです。

外国籍エンジニアを採用するメリット

1. 採用対象となる優秀なエンジニアの数が増える

日本においてエンジニアの獲得が難しくなっている大きな理由の一つが、自社が採用したいエンジニアの母集団が足りないことではないでしょうか。

プロダクト開発の経験が豊富にあり、即戦力となるエンジニアの数は多くありません。そのため、多くの企業がそういったエンジニアを探していることから、需要と供給のバランスが大きく崩れているという現状があります。

ただこれは、日本国内だけを見た場合です。海外に目を向けてみると、即戦力となるエンジニアの母集団は間違いなく増えます。

そうは言っても、日本で働きたいエンジニアがそんなにいるのかという疑問も浮かぶかもしれません。

私は外国籍エンジニア専門の人材紹介会社で働いた経験があり、世界各国のエンジニアの日本への転職を支援していました。その経験を踏まえると、海外には日本で働きたいエンジニアが確かにいます。

日本に来たい理由は様々です。もちろん個人によって違いますし、国によっても傾向があると感じます。よく挙がるのは、日本の治安の良さやアニメや漫画などの影響で日本に住みたいという声です。アジアの国では、母国よりも給与が良いという理由も挙げられます。

TokyoDevは日本で働きたいエンジニアのための求人サイトで、登録者は8,000人以上います。また、日本への転職や生活に関して相談ができるDiscordのオンラインコミュニティへの参加者も6,000人に上ります。

これらの数字からも、海外には日本で働きたいエンジニアが一定数いることがわかります。

2. プロダクト開発が得意な優秀で即戦力となるエンジニアが採用できる

海外に目を向けると母集団が多くなり、その結果として優秀なエンジニアを採用できるチャンスは広がります。ただ優秀で即戦力になるエンジニアが採用できる理由はそれだけではなく、日本と海外におけるソフトウェア開発の構造の違いも大きく影響していると考えています。

その構造の違いとは、いわゆる日本のSIer文化です。

日本ではかねて、ソフトウェアエンジニアはSIer企業で働いてきました。これらの企業では労働時間が収入に直結する構造であり、利益を出すためにはできるだけ安価で人を雇い、厳しい締め切りを設けながら開発するというやり方が構造的に起きてしまっています。

一方アメリカを中心とした英語圏のマーケットでは、多くのソフトウェアエンジニアが数十年にわたりプロダクト会社で働いています。社内でプロダクトを開発する場合、開発プロセスを最適化するインセンティブが働きます。そのため、より良い人材を採用することのリターンが見込まれるのです。

海外の企業では開発チームが内製化されている大きな理由の一つは、有名なテック企業の多くが自身にソフトウェアエンジニアの経験がある人によって創業されているからです(Microsoft、Google、Facebookなど)。こういう企業ではソフトウェアエンジニアがより価値を持つ文化が自然と生み出されます。一方日本では、有名な企業であってもトップがエンジニアのバックグラウンドを持っていないことがほとんどです。

これらのことから、アメリカなどでは優秀なソフトウェアエンジニアが育つ土壌が整っており、そういった人材が豊かに存在していることにも納得できます。またエンジニアが日本よりも高く評価されるため、日本に比べるとより多くの責任を担うことも珍しいことではありません。つまりコードの書き方だけでなく、その他のスキルを持っていることも期待できるといえます。

海外に目を向ければ、現代のソフトウェア開発で求められるこのようなエンジニアの採用可能性を、高めることができるのです。

3. 事業をグローバルに展開しやすくなる

特にグローバル展開を考える日本企業の場合、外国籍エンジニアを積極的に採用することには下記のような大きなメリットがあります。

多様な視点をプロダクトに反映できる

外国籍エンジニアは異なる文化や教育、仕事のバックグラウンドを持っており、これが多様な視点や新しいアイデアをチームにもたらします。例えば、他のマーケットで成功しているデザインや機能を取り入れることができれば、よりよいプロダクトにしていくことができます。外国籍エンジニアが持つ独自の視点は、従来の日本のアプローチでは見過ごされがちな新しいマーケットのニーズや顧客のペインを明らかにする可能性を秘めています。

ローカライゼーションを強化できる

グローバルマーケットでの成功は、プロダクトが各地域の文化や言語に正しく適応できているかどうかに大きく依存します。外国籍エンジニアは自国の言語や文化を理解しているので、プロダクトのローカライゼーションをスムーズに進めることができます。

ローカライゼーションには翻訳の正確性だけでなく、国や地域特有のユーザーインターフェースへの調整や機能の開発が含まれます。外国籍エンジニアが社内にいることで、各国のマーケットで受け入れられやすいプロダクトに改善していくことが可能です。

エンジニアのネットワークを活用できる

外国籍エンジニアが持っている自国やその他の国での仕事におけるネットワークは、日本企業にとって貴重なリソースとなります。彼らのネットワークを通じて、新しいビジネスの機会やパートナーシップが可能になることがあるからです。また、外国籍エンジニアは自国のマーケット動向に精通しています。日本企業が新しいマーケットに適応するための戦略を立てる際には、そういった知識や情報が大いに役立つでしょう。

4. 英語の情報にアクセスでき、開発の生産性が上がる

日本企業がグローバルマーケットにおいて競争力を保つためには、最新の技術やトレンドに即座にアクセスし、迅速に対応する能力が求められます。その点で、外国籍エンジニアを採用し開発チームの英語化を進めることは開発生産性の向上にもつながります。

技術の進歩は日進月歩です。そして最新の情報は多くの場合、英語で発信されています。海外のエンジニアは最新の技術動向、ソフトウェアのアップデート情報、業界のベストプラクティスに自然に、当たり前のように常に触れています。日本企業が海外の企業と同じステージで競争するには、それと同じ環境を社内に作る必要があります。

外国籍エンジニアがチームに加わることで、彼らが普段から接している最新の情報や英語の技術文献へのアクセスがチーム全体に広がります。そうすると、日本人エンジニアも最先端の技術やソリューションを取り入れることができるので、開発サイクルの加速、イノベーションの創出、コスト削減に寄与する可能性があります。

5. グローバルに働きたい意欲のある優秀な日本人エンジニアも集まりやすくなる

グローバルマーケットでの活躍を望む優秀な日本人エンジニアには、国際色豊かな環境で働ける日本企業が非常に魅力的な選択肢になり得ます。そのため、外国籍エンジニアを雇用することは、日本人エンジニアの採用にも好ましい影響を与えることがあります。

英語で実務経験を積むことができれば、その後のキャリアの展望は大きく広がります。より好待遇な会社で働ける可能性が高くなることから、日本人エンジニアにとってグローバルな環境で働くメリットはとても大きくなっているのです。

つまり、英語を使ってグローバルなプロジェクトやチームで働く機会を提供できる企業は、優秀な人材を惹きつけやすいということです。

外国籍エンジニアを雇用する時に配慮すべき点

外国籍エンジニアを雇用することはグローバルな技術力と多様性を会社にもたらします。しかし一方で、コミュニケーションの課題が伴うことも少なくありません。特に、公用語が英語のチーム内に英語が苦手なメンバーがいる場合には、以下のような配慮が必要です。

言葉の壁へのアプローチ

外国籍エンジニアの中には豊富な技術経験は持っているものの、日本語ができない人もいます。そのため、開発チームの公用語を英語にする企業が増えています。とはいえ英語が苦手な日本人エンジニアがいる場合も多く、言語の壁がチーム内の情報伝達の遅れや誤解を招く原因となることがあります。特に、もともとは日本人中心の組織が徐々に外国籍メンバーを増やしていく場合、段階的なアプローチを取るのがいいでしょう。

ステージを分けて開発チームの英語化を進めているGAOGAOの事例は非常に参考になります。代表のTejimaさんの記事をぜひご一読ください。

バイリンガルのキーパーソンの配置

開発とビジネス、それぞれのチームをまたぐ意思疎通は、たとえ言葉の壁がなかったとしても非常に難しいことです。ビジネスチームのメンバーにも英語でのコミュニケーションを求めることも一つの選択肢ですが、実行するには組織として大きな判断が必要です。どちらかの言語に絞ることなく円滑なコミュニケーションを実現するには、日本語英語の両方に堪能なキーパーソンを配置するのが理想的でしょう。開発チームとビジネスチームの間に立ち、双方のニーズや期待を正確に伝えて意思疎通をサポートする重要なポジションです。優秀なバイリンガルを採用する難易度は高いものの、その採用に力を入れることも大事だと考えます。

おわりに

日本では、今後もますます優秀なエンジニア獲得の難易度は高まっていくことと思います。いかに早いタイミングで外国籍エンジニアの採用や開発チームの英語化に踏み切れるかどうかが、中長期的な会社の成長にも影響するでしょう。

会社の成長を促すであろう外国籍エンジニアの採用を検討してみてはいかがでしょうか?

著者について

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髙木早弥奈

グローバル採用コンサルタント

2019年から人材業界に携わっています。様々な国籍のソフトウェアエンジニアの日本での就職サポートを強みにしています。

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