日本人ソフトウェアエンジニアがグローバルテック企業で働くということ

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Shun Arahata

TokyoDev 寄稿者

はじめに

はじめまして、Shunと申します。直近までヨーロッパ本社のフードデリバリー企業の日本法人で、ソフトウェアエンジニアとして働いていました。新卒でYahoo! Japanに入社し、その後数社のスタートアップで経験を積み、エンジニア歴4年ほどのタイミングでこの会社に採用されました。私にとっては初めての英語環境での仕事でした。入社前の英語経験について補足すると、留学経験はなく、英語を使う機会といえば大学院の研究室で留学生と話す程度でした。

入社前、グローバルテック企業でソフトウェアエンジニアとして働くことに憧れはあったものの、身近にそういった知り合いがおらず、実際の働き方をイメージできずにいました。本記事では、自分自身の経験をもとに、グローバルテック企業で働くやりがいと大変さ、求められる英語力、働き方の違いについて、等身大の言葉でお伝えできればと思います。

なお、ここで書く内容は私が在籍した一社での経験に基づくものです。「ある一人のエンジニアが、ある一社で見た景色」として読んでいただければ幸いです。

グローバルテック企業で働くやりがい

グローバルテック企業に入社して最初に強く感じたのは、一つひとつの仕事のインパクトの大きさでした。数億円規模の利益をもたらすような機能追加・変更を実装する機会が複数回ありました。また、そのような機能追加・変更について、どの程度の利益をもたらすかが事前にきちんと検討されていました。日本国内のスタートアップで働いていた経験が長かったこともあり、ここまでのスケールで自分のコードの影響を実感する機会はそれまであまりなく、エンジニアとしてやりがいを感じました。

スケールの面でもうひとつ印象的だったのは、自分の仕事が一度のリリースで国境を越えて使われることでした。私の場合は、チームが日本ベースだからといって日本ローカルの仕事をするわけではなく、グローバルで同じプロダクトを作っていたため、私が担当していたサービスはヨーロッパを中心に複数の国で展開されていました。そのため、設計の段階から「どの国でも成功するか」を考える必要がありました。国ごとに法規制が違うので、特定の国だけのロジックを実装する必要があることもありましたが、複数の国でサービスを展開している会社ならではの問題で、面白く感じました。

^そして何より刺激的だったのは、一緒に働くエンジニアから学ぶ機会の多さでした。

チームには様々な国籍の優秀なエンジニアが揃っており、中にはBig Techで経験を積んできたメンバーもいました。設計議論はすべて英語で行われ、最初はついていくだけで精一杯でしたが、こうした環境に日常的に身を置けること自体が、自分にとって何よりのトレーニングの場になっていたと思います。

グローバルテック企業で働く大変さ

もちろん、グローバルテック企業で働くことには大変な面もあります。

私の場合、日々の業務で一番影響が大きかったのは、ヨーロッパとの時差です。エンジニアの大多数はヘルシンキやベルリンといったヨーロッパの都市に在籍しており、日本との時差は7〜8時間あります。そのため、同期的にやり取りできる時間帯はどうしても限られます。ヨーロッパのメンバーが稼働し始めるのが日本の夕方以降になるため、込み入った議論が必要なミーティングはどうしても夜に寄りがちでした。また、日中に投げた質問の回答が翌日になることも普通で、ちょっとした確認のために実質一日待たされる場面も多く、非効率さを感じることが少なくありませんでした。

そしてもうひとつ、グローバルテック企業で働くうえで避けて通れないのがレイオフのリスクです。私自身、最終的には日本事業撤退の結果、レイオフの対象となる形で会社を離れることになりました。グローバルテック企業では、本社の事業判断や戦略の変更によって、個人のパフォーマンスとは関係なくポジションそのものがなくなることがあります。日系企業の終身雇用的な感覚で働いていると、この「ある日突然」のスピード感はかなりインパクトがあります。また、在籍している間も「いつかレイオフの対象になるかもしれない、そうなったときに今の収入水準を維持できるのだろうか」ということを頭の片隅で考えながら働いていました。

求められる英語力のリアル

グローバルテック企業を目指す日本人エンジニアにとって、どの程度の英語力が必要か気になると思います。

日常会話のレベルからグローバルテック企業のエンジニア職に飛び込んだので、最初は苦労しました。

特に難しかったのは、設計に関する議論です。仕様の確認や進捗報告のような「型のある会話」は早い段階で慣れることができましたが、設計レビューのように複数人で意見を出し合い、議論が発散しがちな場では、どう議論を方向づけるかが難しかったです。

これを上手く乗り越えられたと言えるかは分かりませんが、自分なりに意識していたのは、同僚が使っているうまい言い回しをなるべく盗むことでした。ミーティングの中で見つけたうまい言い回しはストックしていきました。

そして1年半ほど経った頃、自分では大きな変化を感じていなかったのですが、外国籍の友人と英語で話したときに「前より相当うまくなった」と驚かれることがありました。毎日英語で仕事をしていると、伸びは自分では気づきにくいものですが、確実に積み上がっているのだと思います。

これからグローバルテック企業に挑戦しようとしている方に伝えたいのは、入社時点で完璧な英語は必要ない、ということです。

実際、グローバルテック企業で働いている知り合いの中には、Google Meetの字幕機能などを駆使しながらミーティングをこなしている人もいます。そもそもある程度の英語力がなければ採用面接の段階で通らないので、面接さえ通過できたのであれば、入社後の英語については過度に心配しなくて大丈夫だと思います。

ワーキングカルチャーのギャップ

働き方そのものについても、日系企業との違いを感じる場面が多くありました。特に印象に残っているのは、個人のオーナーシップがはっきりしていたことです。

私が在籍していた会社にはDRI(Directly Responsible Individual) という考え方があり、一つひとつのタスクやプロジェクトに対して「最終的に責任を持つのは誰か」が常に明確に決まっていました。曖昧に「チームで進める」のではなく、「これは誰のオーナーシップか」をはっきりさせる文化です。最初は責任の所在が個人に集中することにプレッシャーを感じましたが、慣れてくると、自分の判断で物事を前に進められる手応えがあり、エンジニアとしてはとてもやりやすい環境でした。

もう一つ大きく違ったのは、ミーティングの少なさです。日系のスタートアップにいた頃は、関係者全員での合意形成が重視されるためか、ミーティングに多くの時間を取られていました。

一方で私が働いていたグローバルテック企業では、決めるべき人が決め、必要な情報はドキュメントで共有する、というスタイルが基本でした。同期的に集まるのは本当に必要なときだけで、それ以外の時間は実装や設計に集中できました。

エンジニアとして、まとまった時間を確保して手を動かせるというのは、想像以上に大きな価値だったと感じています。

まとめ

最後はレイオフという形で区切りを迎えましたが、グローバルテック企業でエンジニアとして過ごした時間は、自分のキャリアにとって大きな財産になりました。大きなインパクトのある仕事、多国籍の優秀なエンジニアとの議論、明確なオーナーシップのもとで進める働き方。日系企業だけでキャリアを積んでいたら得られなかった経験ばかりです。

雇用の安定性や時差といったトレードオフはありますが、それを差し引いても挑戦する価値は十分にあった、というのが今の実感です。「グローバルテック企業で働いてみたい」と興味がある日本人エンジニアの方にとって、この記事が判断材料の一つになれば嬉しいです。

著者について

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Shun Arahata

寄稿者

Shunは東京の大学院を卒業した後、2021年から新卒でソフトウェアエンジニアとして働き始めました。主に今まで、バックエンドエンジニアとして働いてきて2024年から2026年に日本市場撤退に伴いレイオフされるまで、グローバルテックカンパニーで働いていました。

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